「岡山理大のグループがうつ病に関与する物質を特定した」という記事があります。
これは、「お薬を飲んだら治ります。」ということにつながりますよね。
それは、それで「良い」のかもしれません。
では、「うつ病」の原因は何でしょう?
少なくとも院に訪れる依頼主は、
職場での仕事の「内容」、「人間関係」が原因による「うつ病」です。
「治る」とすれば、人間関係をも「治す」ということでしょうか?
人や人間社会は、そんな単純な仕組みでしょうか?
「熱さまし」を飲んだら、平熱になりました。
これで、あなたは「風邪」が治りました。
・・・と同じです。
グループは、体内の至る所に存在し、傷付いたタンパク質を修復したり、細胞を保護したりするタンパク質群が、うつ病に関わっているとみて研究。熱などのストレスによって増える「熱ショックタンパク質(HSP)」と呼ばれるタンパク質群で、他のマウスから攻撃を受けストレスでうつ状態になったマウスを使って関連性を調べた。 その結果、うつ状態のマウスでは多くの種類があるHSPのうち「105」というタイプが脳内の一部で減少していた。HSPを増やす働きを持つ胃薬を経口投与すると、うつ症状の特徴である攻撃マウスに対する行動力の低下を抑えることができた。
さらに、HSP105は、うつ病など脳の神経疾患に関与することが知られている「脳由来神経栄養因子(BDNF)」というタンパク質の量を増やすことで、うつ症状を抑えている仕組みも突き止めた。
「ヒートショックプロテイン」は、単純に良いとは言えない。
岡山理大の記事に、「HSP」という言葉が出てきます。
これは、「熱ショックタンパク質」を意味します。
ネット上や健康広告では、「ヒートショックプロテイン」として「健康に良いモノ」として盛んに言われています。
しかし、
「ヒートショックプロテイン」を調べるといくつかの種類があり、単純に「良いモノ」と言えません。
いくつかわかったことを書いておきます。
「身体を温めなければできない」というわけではない。
・ヒートショックプロテイン(HSP)は、熱だけではなく、さまざまな刺激で生じる。
・ヒートショックプロテイン(HSP)の一つに、Hsp90があり、癌を促進させる。
熱ショックタンパク質(HSP)
発現誘導
細菌GroES/GroEL複合体のモデル。
HSPの発現は細菌感染や炎症、エタノール、活性酸素、重金属、紫外線、飢餓、低酸素状態などの細胞に対する様々なストレスにより誘導されることが知られている。
核内タンパク質である熱ショック転写因子(HSF)はDNA上の熱ショックエレメント(HSE)に結合することによりHSPの発現を制御する転写因子として働くが、熱ストレスによりHSFが誘導される詳細な機構については十分に明らかにされてはいない。
Hsp90ファミリー
Hsp90にはHsp90αとHsp90βというアイソフォームが存在する。Hsp90αとHsp90βはアミノ酸配列の相同性は高いが、刺激に対する応答性は若干異なる。Hsp90は非ストレス環境下においても細胞内発現量が高く、真正細菌や真核生物において広く発現して分子シャペロンとして機能する。例えばHsp90は細胞内において不活性状態のステロイド受容体と複合体を形成していることが知られており、その機能維持を行っている。また、Hsp90は癌の進展との関連が深く、Hsp90阻害剤は抗がん剤として期待されている。
「癌には、効果がある」ではない、むしろ「促進する」可能性がある。
・多くの癌では、すでに、ヒートショックプロテイン(HSP)がたくさんできている。当然。癌を「促進するHsp90」もたくさんある。
・Hsp90を無くすせば、癌抑制に効果がある。
熱ショック転写因子(HSF1)
細胞内のタンパク質は温熱ストレスに極めて感受性が高く,容易に変性し凝集することで細胞毒性を示し細胞機能の異常を導く.細胞は,このようなタンパク質の変性に対応して,その恒常性を維持する機構を備えている.
多くのがん細胞で熱ショッックタンパク質の発現が亢進し,逆に,がん細胞は正常な細胞と比較して熱ショックタンパク質の発現の抑制に感受性が高い.この性質から,Hsp90阻害剤ががんに対する第相の臨床試験に進んでいる.さらに,HSF1は,がんの発生と進展に大きな効果を持つことが明らかになった.
HSF1欠損マウスでは,薬剤による皮膚がんや p53欠損によるリンパ腫の形成がほとんど起こらない.また,多くのがん細胞の増殖は一過性に HSF1をノックダウンさせると著しく抑制された.
アンチエイジングも可能になるが同時に、癌も促進する
・ストレスが無い時には、Hsp90の活動は、HSF1で抑えられている。(癌が進行しない)
・ストレスを加えるとHSF1は、アンチエイジング、老化抑制に関係しているが、同時にHsp90を自由にすることで、癌の浸潤・転移を「促進」する。
ストレスのないときには HSF1 は Hsp90 や Hsp70 などの HSPs と結合して不活性な状態に保たれている.細胞がタンパク質毒性(熱ショックなど,タンパク質の構造を変化させて疎水性領域を露出させるような要因)などの<ストレスにさらされると,Hsp90 や Hsp70 は変性したタンパク質に結合するようになる
このように,HSF1 は分子シャペロンなどのアンチエイジング遺伝子の発現を介して老化抑制や寿命延長に関与しているが,一方,がん細胞ではHSF1 はむしろ細胞の増殖や浸潤転移などを促進することで宿主に対しては不利益になるように働いている.